シュトーレン ?シュトレン?ドイツ伝統のパン菓子。

2015年も残りわずか。もうすぐクリスマスがやってくる。
街のベーカリーやパティスリーに入れば、クリスマスを目前にし、いつもより華やかにデコレーションやラッピングがされた、たくさんの種類のベイクがショーケースや棚に並んで店内を彩っている。

クリスマスの特別なものだけでなく、普段からよく見かけるケーキや焼菓子さえも、クリスマス前のこの時期になると街並や人々のように一段とオシャレに飾られている。見ているだけで心がウキウキしてしまうような光景だ。
この季節は、数々のショコラやチョコレート菓子がたくさんの店先に揃う2月のバレンタインと並んで、ベイク好きにはたまらない季節でといえるだろう。

もっとくわしく知りたい、いろんなベイクのこと

クリスマスツリーのオーナメントにも使われる「ジンジャークッキー」や、童話ヘンゼルとグレーテルの魔女のお菓子の家から名前がついたという「ヘクセンハウス」、フランスのクリスマスケーキ「ブッシュ・ド・ノエル」に、イタリアのクリスマスのパン「パネトーネ」、そして日本でも人気を集めているドイツの伝統焼菓子「シュトレン」。

ひとつまえの記事「ドイツのクリスマスに欠かせないシュトーレンのレシピ」でも取り上げたシュトレン。
いつからこんなに人気になったのか分からないが、日本でもクリスマスには欠かせないアイテムとなり、ベーカリーやパティスリー、輸入食材店やスーパーマーケットなどでも販売されているのを見かけるようになった。だが、シュトーレンにはどんな歴史があって、どんなふうに日本に伝わってきたのか、わたしも含め知らない人が多いのではないだろうか。

それはシュトレンに限ったことではない。日本では世界中の様々な種類のパンが食べられているが、歴史やその背景など知らないことがたくさんある。毎日食べるいろんなパンや焼菓子のことを、もっとくわしく知ることができたら、もっとパンたちとの出逢いが楽しく、そしてとてもステキなものになる、そんな気がしないだろうか。

ドイツからやってきた シュトーレン (シュトレン)

雪のような粉砂糖をたっぷりまとったシュトレン
「シュトレン」はドイツに古くから伝わる伝統的なパン菓子だ。ずっしりとした重めのパンとケーキの間のような日持ちのする焼菓子で、ラム酒浸けのドライフルーツやナッツなどを、バターや砂糖とともに小麦粉に練りこんで、イーストや酵母などを使い発酵させて焼かれるので、作り方としてはパンに近い。

焼き上がりにはたっぷりの溶かしたバターをしみ込ませ、その上からこれまたたっぷりの砂糖をまぶすので、ふつうのパンとは異なり、レシピによっては1ヶ月〜3ヶ月程も日持ちするものもある。
そして日持ちのするシュトレンは、1日経つごとにフルーツやラム酒の風味が生地へと移って熟成し、おいしさを増してゆく。

ひとくちに「シュトレン」といっても、作られる地域や中に入れる材料などによって実にたくさんの種類があり、味や食感なども異なる。各家庭や店によっても、異なるレシピがあり、それぞれの材料の配合や作り方の手順なども違ったりする。
中に混ぜこむ材料によって分類される名前のものや、作られている都市の名がついたものなど様々で、ほぼパンに近いものから、限りなくお菓子のようなものまで多種多様だ。
ちなみにWikipediaには、下の5種類がドイツで作られる主なバリエーションとして紹介されている。

マンデルシュトレン(Mandelstollen):アーモンドパウダーなどを練りこんだもの
マルジパン/ペルシパンシュトレン(Marzipanstollen / Persipanstollen):マジパン、もしくはペルシパンを練りこんだもの
モーンシュトレン(Mohnstollen):ケシの実を練りこんだもの
ヌッスシュトレン(Nussstollen):各種ナッツを練りこんだもの
ブターシュトレン(Butterstollen):外側にバター、中にレーズン・アーモンド・ドライフルーツを練りこんだもの
クワルクシュトレン(Quarkstollen):クワルクチーズ、フレッシュチーズなどのチーズ製品を練りこんだもの
<出典:Wikipedia「シュトレン」>

「シュトーレン」と「シュトレン」どちらが正しい?

フルーツとナッツがたっぷり詰まったシュトレン

日本では「シュトーレン」がこの焼菓子の呼び名として定着しているが、正しくは「シュトレン」。
「Stollen」と子音の「l」がふたつ重なっているので、ドイツ語の発音としては「シュトーレン」と伸ばすのではなく、「シュトレン」と短く発音するのが正しいのだそうだ。

それではなぜ「シュトーレン」と呼ばれているのだろうか。たまたま最初に日本に伝わってきたときに、日本人がうまくドイツ語を聞き取ることが出来ず、聞き間違えてしまったのだろうか?他にも間違った音で海外から日本に伝わっている名称や言葉はたくさんあるので不思議はない。

そんなことを考えていたら「注文菓子工房 Elfen(エルフェン)」という洋菓子店のHPで興味深い記事を見つけた。
そしてその記事の中には、こう書かれてあった。

日本では一般に「シュトーレン」と呼ばれますが、綴りの上からも伸ばさない「シュトレン」 がドイツ語での一般的な発音です。 (シュトーレンは高地ドイツ語(中部・南部方言 Hochdeutsch )由来のようです。)
出典:Elfen(エルフェン) 「粉雪まとうシュトレン(Stollen)の研究」 より

なるほど、方言か。たしかに日本でも方言によって発音が異なるものの名前などがよくある。
「シュトーレン」という呼び方は、あながち間違いではないということになる。ドイツの一部の地域では「シュトレン」ではなく、日本と同じように「シュトーレン」と呼ばれているのだろうか。
日本にこのパン菓子を伝えた人は、ドイツの方言を話す人だったのかもしれない。こうして調べてみることは、なかなかおもしろい。
ここに書かれている由来が本当であるならば、「シュトーレン」も「シュトレン」も、どちらが正しい、どちらが間違っている、いうわけではないことになる。

この「注文菓子工房 Elfen(エルフェン)」の「粉雪まとうシュトレン(Stollen)の研究」の記事の中では他にも、シュトレンの歴史やアドヴェント(待降節)、そしてクリスマスの歴史などについても触れられている。とても面白く興味深い内容なので、シュトレンについてもっと知りたいという方は、ぜひ読んでいただきたい。

やがて迎えるクリスマスを心待ちに、日々熟成していく味を少しずつ楽しみながら味わう

寝かす程にしっとりと美味しくなる
ドイツではだいたい11月頃からシュトレンが焼き始められる。そして12月になれば、町中のパン屋や菓子屋の店頭にたくさんのシュトレンが並び、クリスマスシーズンの到来を告げる。

シュトレンはお祝いのケーキや焼菓子のように、買ったり作ったりした焼き立てをすぐに食べるのではない。クリスマスマーケットが始まるのと同じ、キリスト教で「アドヴェント」と呼ばれるクリスマスを迎える準備の期間に、薄く切ったものを少しずつ食べていくいう習慣がある。クリスマスを心待ちに日々準備をし、クリスマス気分が盛り上がっていくように、シュトレンは1日、また1日とフルーツやラム酒の香りが生地に馴染んで味わい深くなり、熟成していく。
日を追うごとにおいしさが増し、その味の変化を楽しみながらクリスマスを待つなんて、なんだかとても素敵な話だ。

我が家で作ったシュトレンはクリスマスを待たずに食べ切ってしまったが、来年はドイツの素敵なクリスマスの習慣を見習って、1ヶ月以上熟成させたシュトレンを味わってみたいと思う。

食べたい、贈りたい、いろいろなお店のシュトレン

シュトレンをクリスマスプレゼントに
そんな歴史や背景を知れば知るほどシュトレンは興味深いし、人にも伝えたり、贈ったりしたくなる。
ゆっくりと何かを待ちわびるということを誰かと共有することは楽しいと思う。

今回、シュトレンのことを調べたり、Instagramを見ていてびっくりしたのが、本当にたくさんの人たちが家でシュトレンを作ったり、お取り寄せをしたりされていることだ。
いろんなお店でシュトレンが売られていたり、予約受付中というPOPなどを見かけてはいたのだが、どこのお店と決め切ることが出来ずお店などで売っているものは買わなかった。

けれど、Instagramには本当にたくさんのシュトレンがUPされていて、シュトレンそのものはもちろんのこと、ラッピングまでもがオシャレで、気になるもの・食べてみたいと思うものが多く、事前にもっと調べておかなかったことを後悔した。プレゼントとして贈ったり、贈られたりするのもいいだろうなと思った。

来年こそはぜひ早めにしっかりとリサーチをし、予約やお取り寄せをして、自家製のものとともに熟成させて食べ比べたりしてみたいと思う。
友人同士でいろいろなシュトレンを持ち寄ってクリスマスパーティをするのも楽しいかもしれない。

わたしが気になったシュトレンはこちらのお店のものたち。
みなさんが買ったもの、食べたものもあるだろうか?

・ドイツパンと言えばココ!
パン焼き小屋 zopf(ツオップ)さん

・フレンチの巨匠ジョエル・ロブションの味
BOUTIQUE de Joel Robuchon(ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション)

・なかしましほさんの作るナチュラルなおやつ
foodmood(フードムード)さん

・緑道わきの小さなパンやカフェ
ユヌクレさん

・食+食−食×食÷食=365日のベーカリー
365日(さんびゃくろくじゅうごにち)さん

どれも人気があるお店なので、おそらく今年はもう手に入らないと思われるが、このブログを読んでくださっている方で食べた方がいらしたら、ぜひ感想とオススメの度合いなどを聞かせていただきたい!

クリスマスまであと4日。
May you enjoy the special moments of the Christmas Season!
おいしいパンとすてきなクリスマスを!

クリスマスまでの間、少しずつスライスして楽しむ。
 
 
 

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